『神曲 地獄篇』と双子座のダンテ

 


双子座の新月なので、本を読んだ話を。

ダンテの『神曲 地獄篇』。タイトルを知らない人はいないが、読んだ人はなかなかいないのではないかと思う本のひとつ。(きっかけがあって手にした本なのだけど、それはまた今度に。)そういう本がたくさんあって、リストに入っている本が山ほどあるのを読んでいけたらいいなと思う。名著だと言われていても、やっぱり自分で読んでみなくてはと思うので。

さて、神曲。「キリスト教文学の最高峰の叙事詩」の謳い文句。でも私的にはちょっと思っていたのと違った。

いや、そうか。この時代(14世紀初頭。皇帝と教皇が権力争いをしていたらしい)宗教とは、為政者でもあったダンテにとって政治であり社会ルールそのものなんだなということがよくわかる。教会組織の腐敗と権力闘争でドロドロしている感じがふんだんに。血生臭く、ののしりあう人間たち。そしてダンテの政敵たちはみんな地獄に堕とされちゃう(当たり前だけど創作物だから著者が神の如く裁いてしまうのだ、誰が天国/地獄へ行くかを。)。ダンテは物語のなかで自分を神格化しているけど、自分が100%正義の存在だと言いきれるものなのかな。自分が主人公で、私は特別に神に導かれていますっていう設定がまずすごい。感覚の違い。それだけ追い詰められたのかもしれない、現実世界で。

そんな時代背景もあって地獄には聖職者が多め。洗礼を受けなかった人も全員地獄行き設定なので、キリスト教誕生より前にこの世を去っている人も全員地獄にいるけど、みんなが責苦を負っているわけではなかったり(特別救済、VIP待遇あり)。

当時のイタリアの歴史に詳しくないと本来の意味を受け取れないのかな、とも思う。私が読んだ講談社学術文庫版では、専門家の前置き、注釈、解説がしっかりあるので、読み込めばある程度理解できるのかもしれない、当時の政権争いにあんまり興味がわかず読み飛ばしてしまったところもあるので。

そして「詩」であるから、原文イタリア語で読んだら美しさがわかるのかもしれない。

*中世ヨーロッパの本を読む時の私的ポイント、「占星術をどうとらえているか」。解説によると、占いは運命決定論的で、人々を怠惰にさせたり労働放棄させ、安易に戦争に向かわせる悪いものだと読める、というような記述があるものの、一方でダンテは自分の星(太陽双子座)を知的活動に結びつけ、詩の傑作を残す好ましい星の配置だと思っていたみたいなので(ほほえましい)このダブスタは当時の天文学と占星術の境目が現代と異なるせいかとも。

太陽は神性の光で、月はそれを反射する人の理性・知性なのだ、という部分が心に残る。

ギリシャ神話の話がたくさん登場し、キリスト教、聖書の話と共存しているのも面白い。

『地獄篇』のあとに『煉獄篇』『天国篇』があり、まだ全体の1/3しか読んでいないということで…残りはどうしようか考え中。





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